水の都の洋菓子店
内容紹介
誕生日に食べたショートケーキが、彼の運命を決めた――神田純は菓子職人となり、幼いときに住んでいた水の都と呼ばれる町で、洋菓子店ロワゾ・ブリュをオープンさせたのだった。すぐに優秀(?)で華のあるスタッフ達もそろい、店の前途は明るいものに見えた。しかし、神田純の前には、どうしても立ちはだかる壁があった。それは、今は亡き天才パティシエ・高村光太郎の存在。この町の人たちには、過去に彼が作った最高の洋菓子の味が未だに刻まれていた。そしてロワゾ・ブリュの味は、どうしても彼に比べて劣っていたのだった。その有形無形のプレッシャーに、神田純は苦しめられることになる。そうしたある日――純は、とあるきっかけで光太郎のお菓子の秘密を知ることとなった。その洋菓子は味も究極だったが、それに加えて人を幸せにする魔法がかかっていたというのだ。確かに光太郎の味を知る人からはそういう声が聞こえた。「あそこのケーキを食べると、人生の嫌なことまで消えるほど幸せになれた」「あの菓子との出会いで、闇の中にいた私の心に一気に光が差したのよ」まさか魔法とは……。つまり、光太郎の洋菓子に追いつくのは、絶対に無理だということだろうか。否、可能性はしっかりとあった。光太郎の使っていた魔法は、娘である未果にも受け継がれていたのだ!最高の洋菓子と魔法が与える幸せと波乱。そんな中で深まっていく絆、そして恋。たくさんの想いのこもった洋菓子店の幕が、今ここに開かれる。