ゆのはな
内容紹介
――物語の季節は冬。
大学が冬休みに入り、あても無くバイク旅行に出掛けた『草津拓也(くさつたくや)』
は、片田舎にある『ゆのはな町』を訪れた矢先に交通事故を起してしまう。
道端にひっそりと建っていた古びた祠にバイクごと突っ込み、意識を失ってしまう拓也
再び目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは、仰向けに倒れた自分を、宙に浮かんだまま覗き込む、奇妙な格好をした少女の姿だった。
「あ、お目覚めですね。
ご無事のようで何よりです」
ゆっくりと身を起した拓也に微笑みかける、不思議な格好をした少女は、自らを
土地の守り神である『ゆのは』だと名乗る。突然のことで呆気に取られている拓
也に対して、ゆのはは土地神としての力を使って、瀕死の重傷を負っていた拓也
を治療したことを語る。
いえいえ、お礼を言われるほどのことではありません。
その代わりと言っては何ですが、
壊れたほこらの修理代を負担して頂けないでしょうか
訳が分からないまま、とにかく礼を言おうとした拓也を制して、
こからともなく取り出した電卓で見積もりを始めるゆのは。
ぴっぽっぱ、
これなら235万円といったところでしょうか。
こんなの命の値段だと思えば
ぜーんぜんおトクですよね♪
――こうして半ば強制的に、『命の恩人』であるゆのはの要求を聞くことになった拓也は、
『ゆのはな商店街』の中でバイトに明け暮れる日々を送る羽目になった。