ドラゴンの姫冠 リマスター版　(ピンキィソフト)

時代は23世紀…20世紀末以来の環境ホルモン問題を収拾できぬまま、世界の生物は少しずつ死滅していった。種の絶対数も減り、人類の人口も激減する中、人々は少しずつ「ある存在」に気づきはじめる…それが「幻獣」と呼ばれる半実半霊の生き物達だった。太古より、一部の霊的に敏感な人々には姿をかいま見せていた彼らだが、なぜ今になって現実に存在し始めたのかは謎のままだ。ただ、一部の神秘主義者の説によれば、地球上に生まれ変わる魂の数が少ない時や異常に減少した時、歴史的にこのようなことは幾度かあったという。先カンブリア期の生命のビッグバン直前、恐竜の絶滅時、そして中世のペストの大流行時や大きな戦争で人々の命が大量に失われた時など…幻獣達は世界の魂の密度のバランスをとるために、現実の世界へと入り込んでくるのだという。だが、彼らが存在し続けるためには、あるものが必要だった。それは人類の「精気」！幻獣達は、現実の世界の住人である人間の異性と交わることで、その「精気」を手に入れ、この世界に踏みとどまる力を手にすることができていたが、それにはいくつかの問題があった。一つは、幻獣達を性の対象として監禁し、人間の相手をさせる売春宿「幻獣屋」の出現。自由を奪われることを本能的に嫌う幻獣達は、自らを守るために、その姿をおぞましいものへと変身させた。そして、彼らの人間への不信感は急激に増大し、必要な「精気」を手に入れるために人々を襲い始めたのだ。幻獣達は戦いに勝つと、人間から最後の一滴まで「精気」を吸い尽くすため、吸われた方はホルモン分泌異常による重病に陥ることはもちろん、下手をすると生命力の枯渇によって死に至ることも珍しくなかった…（ちなみに、男である主人公を襲う幻獣は、特別な場合を除いて女の子だけ。遭遇するモンスターが女の子だけなのは、そのためだ。）そして、もう一つの問題。「精気」には、幻獣にとって強力な依存作用があり、欠乏してくると彼らは正気を失うほどの禁断症状に襲われるのだ。逆に言えば、その状況故に人間達を襲っているとも言えるだろう。ただでさえ衰退気味だった人類の文明は、幻獣達の出現によっていっそう下降した。有害な排気ガスをまき散らす移動手段は、どういうわけか幻獣達の襲撃を異常に受けるめ、人々は自動車や飛行機を使わなくなり、技術も衰退していった。同じ理由で、火力発電所は幻獣達に襲われて殆ど壊滅。原子力発電所に至っては、土の精霊達によって放射性物質の核分裂を無効化され、ただの前時代のモニュメントと化していた。水力、太陽、風力等の自然エネルギーからの電力はかろうじて残っていたが、それまでの文明を維持することは当然できず、最先端と呼ばれる産業から工場も次々と閉鎖し、人々は自分の身を守りながら自給自足をする大昔の生活へとスタイルを変化させていった。もちろん当初、各国の軍も幻獣殲滅の作戦を立てなかったわけではない。強力な火器や衛星による攻撃まで動員して徹底的な戦闘を開始しようとしたのだが、その時、すでに武器は効力を失っていた。火薬は発火しなくなり、化学兵器は中和され、通信手段は大気の歪みで届かなくなっていたのだ。なぜこうなったのかは謎のままだが、やはり幻獣達の仕業であろうと噂されている。国の形態も変化していった。電気通信、高速交通手段がダメになったことで大きな国家は存続不能となり、首都の中央政治は自然崩壊。地域ごとの自治が大きな比重を占め、ほぼ都市国家に近い体制が固まりつつあった。そんな中、「戦士」と呼ばれる職業が現れた。といっても、国家間の戦争に参加する人達のことではない。彼らの主な仕事は、自らの剣の腕と魔法を武器に幻獣達の徘徊する広野を移動しながら、連絡や調査・用心棒など、個人や国家から依頼されたことを請け負う、一種「なんでも屋」みたいなものだった。殆どの「戦士」はギルドに所属していたが一匹狼も見かけることがあり、彼らにはペット探しから高価な財宝の運搬、果ては国家間のスパイ活動まで、いろんな依頼が舞い込んでくるという。（もちろん、中には信用できない詐欺師まがいもたくさんいるらしいが…）主人公は、そんな「戦士」の一人。やっと見習い期間を終えて、ドラギオン帝国の首都に仕事を探しにやってきた、まだまだかけ出しの青年。元首であるドラギオン王が、『ドラゴンの王冠（クラウン）』と呼ばれる財宝を探し出した者に高額な報酬と地位を与えるとの噂を聞いたのだ。ドラギオン王は、もともと「戦士」あがりだが、地域の幻獣達の出現を減らす魔力を持つと言われ、その力によって王の座に着いた。確かにこの国では、幻獣と遭遇する可能性が他国よりかなり低く、そのために人々は比較的安心して生活を営むことができている。合議による意志決定機関を持つ他の都市国家が多いにも関わらず、この国だけが王制をとったのも、王のその実力とカリスマによるものだと言えよう。主人公は、大きな宮殿の階段を一歩一歩踏みしめて、謁見の間に向かう。玉座に座るドラギオン王は、端正な顔つきの壮年の紳士だった…そしてこの出会いから、冒険に満ちた人生の旅が始まるのだ☆