空のつくりかた -under the same sky,over the rainbow-
内容紹介
――生きる目的がない。それは、一度でも目的を持った者だけが言える言葉。そして、生きる目的(それ)をまだ持たぬ者は、この街に相応しくない。物語の舞台はとある地方都市――ナオカ。空まで続くような長い坂、地を這うように消えない霧、そして、街の主のように振る舞う気まぐれな吸血鬼が名物の天壌都市奈陵(なおか)。語られるは、過去の失敗により『目的』と『自信』を失った青年・五十海諒の物語。彼は、過去、人として挫(くじ)けた。それから、人として色々なものを欠き、空っぽのまま毎日を生きている。掲げる看板は『探偵社』──しかしその実、依頼の内容は、迷いペットの捜索や、遺失物の探索、屋根の修理から水のトラブルまでとなんでもござれ。本来の『探偵』ではなく『なんでも屋』と呼ばれることもしばしば。そんな、目的もなくただ流されている彼の毎日が、ひとりの少女との出会いによって色づき始める。少女の名前は、ハル=クリス。街に来たばかりの、一人の魔法使い見習い(自称一人前)の少女だった。欠けたモノを見つけるため。欠けたモノを埋めるため。見つけて埋めて成長するために。「さあ、このあたりで一歩、踏み出してみましょう」これは、空の見えない街での、空っぽの人々による、ここからの物語――