Collection~ReBIRTH~
☆ストーリー
僕が「彼」に出会ったのは、ほんの些細なきっかけからだった。
友人……と言うわけではない。
何しろ、僕は「彼」の名前も年齢すら、なにも知らないのだから。
「彼」はいつも白衣に身を包み、革の手袋とブーツを履いていた。
出会ってから暫くの間、僕は「彼」からの電話に呼び出され、指定された場所で会うのが普通だった。
ある時は人気の無い公園、ある時は、廃業した植物園……。
そこで話す内容も、宇宙論だったり、取り留めの無い人生観だったりした。
そんなある日のことだった。
「彼」は僕に、とっておきのコレクションを見せてくれると言いだした。
「今まで誰にも見せた事はないんだ」
そう、いつも見せる奇妙な、引き攣れたような笑顔で、彼が言った。
彼に連れられて向かった先は、奇妙な噂の絶えない、廃病院だった。
彼はまるで自分の家のような気安さで中に入り、僕を誘った。
そこには、大きな試験管のような、ガラス製のチューブが5本。
淡く光る液体に満たされた容器の中には、裸の女性が浮かんでいた。
容姿も、そして、年齢も様々な5人の女性。
それらが、青白く、不気味に光っている。
「彼」は目線を上げてチューブの中を眺め、そして満足そうに微笑んだ。
「これは、夢なんだ」
唇の端を吊り上げ、可笑しくて堪らない、と言った顔で「彼」はそう言った。
「ゆ………夢?」
僕は聞き返す。そんな反応すら可笑しいのか、彼はクスクス笑いながら言った。
「今日は、君に………僕のコレクションの中でも、とっておきの「夢」を見てもらおうと思ってね」
彼はそう言うと、唇の端を持ち上げて笑う。
「大丈夫………きっと、楽しんでもらえるから」
彼の言葉が、どこか遠い。
「僕」が体験する奇妙な「夢」。
誘われるままに「夢」を見る僕の前に現れる奇妙な「女」。
収集される「夢」は、やがて僕を、僕の現実と夢の境界を曖昧にしていく。
今見ているものは夢なのか、現実なのか。
そして、もし夢だとして、一体誰の夢なのか。
混迷する物語の果てに「僕」が見るものとは……。
サンプル画像
コメント