世界と世界の真ん中で
内容紹介
締め付ける苦しさ、凍えるような寂しさ、身を焦がすような片思い──時間の経過とともに失われる想いもあれば、その命が尽きるまで解き放たれない想いもある。ただ1つ言えることは、そんな激しい感情の数々が、世界を作っているのだということ。その日、鍵ノ森学舎の学院寮のひとつである『エルデシュ』は、いつも以上の大騒ぎに見舞われていた。近江連理の妹である小々路の退院を明日に控え、「新人さんを気持ちよく迎えよう!」という月館美紀の提案で大掃除が始まってしまったからだ。無口で人づきあいの苦手な白取愛良。油断すると自分の世界に没入する数学者、朱音遥。思慮深く見えて実は結構なお調子者、弐相中。そんな『エルデシュ』のメンバーを指揮して、寮内をくまなく掃除していく連理。と、あらかた掃除も片付いた目に留まったのは、屋根裏部屋へと続く梯子だった。──梯子を軋ませ上った屋根裏部屋で見つけた手記。そこに記されていた言葉が、連理の平穏な日常を変えていくことを、連理はまだ知らない────